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サンタ・ルチア
Santa Lucia

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土着品種を復活させ自然なワイン造りに取組む注目ワイナリー

イタリアでも特に食通の州として知られるエミリア・ロマーニャ州の南東端、小国サン・マリノに程近い、かつて硫黄の鉱山として栄えた丘陵地帯にメルカート・サラチェーノの村はあります。サラチェーノとはかつてこの地を治めていた領主の名で、彼は地元の人々のために様々な物を売る市場を設けました。市場は人々から「サラチェーノの市場(Mercato di Saraceno)」と呼ばれ親しまれました。そしてその呼び名がそのままここの地名となったのです。

この地に拠を構えるサンタ・ルチアの歴史は、1960年代後半に始まります。当主であるベネデッティ家は、先祖から受け継いだ100ヘクタールにも及ぶ土地で農業を始めました。当時は様々な農作物を始め、家畜からチーズや生ハムそしてワインも造られました。しかし当時のワインは彼らのブランドで出される事は無く、全て樽のまま売られていました。

転機は1990年代に訪れます。 現当主でもあるパリーデ・ベネデッティは父親からこの地所を受け継ぐと、ここで良質なワインを造り、彼自身のブランドで売る決意をしたのです。大学で農学を学び、学士でもあった彼は当初教師の道をとるか、父の農業を継ぐか悩みました。しかし教師は性格的に合わないと考えた彼は、農業の道を選びます。そして父と共に農業を営む日々の中で、彼はこの土地の持つ限りない可能性を見出したのです。

15ヘクタール程だったぶどう畑は拡張され、それまで細々と栽培されていたファモーゾやチェンテジミーノといった土着ぶどうの栽培面積も広げられました。そして全てのぶどう畑において有機栽培への転換が図られました。彼らのぶどう畑にはぶどう以外にも様々な植物が植えられています。 一見雑草にも思えるこれらの植物が、実は有機栽培では害虫の誘引や肥料としての用途などで重要な役割を果たしているのです。彼らのぶどう畑は海抜200~400mの丘陵地帯に広がっています。現在の畑の面積はおよそ20ヘクタール、土壌は粘土質主体です。サンタ・ルチアは2013年にオーガニック認証を取得(Suolo e Salute、2015年よりDemeter)しました。また3年前からはビオディナミによるぶどう栽培を行っています。

ぶどうはアルバーナとサンジョヴェーゼが主体で、他に土着品種のファモーゾとチェンテジミーノが植えられています。ぶどうの平均樹齢は8年から9年、一部45年を超える古木もあります。パリーデは特にアルバーナのポテンシャルの高さに注目しています。アルバーナの房は長く、果実同士のすきまが空いているため、アパッシメント(陰干し)に向いています。アルバーナ・ディ・ロマーニャといえばフルーティな辛口の白ワインとして世界的にも知られていますが、陰干しによって良質な甘口ワインの原料にもなり得るのです。アルバーナの樹は草が生い茂った畑を好みます。これによってぶどうにはフレッシュさと豊かな酸がもたらされます。 最近パリーデはアルバーナを植えるために新たに17ヘクタールの畑を購入しました。

ファモーゾは、かつてはメルカート・サラチェーノで多く栽培されていました。古い資料には15世紀から18世紀にかけてこのぶどうが栽培されていたことを裏付ける記述も残っています。当時の人々はこの程よくアロマを持ったぶどうから独特の複雑な芳香を持ったワインを造っていました。やがて他のぶどう品種の台頭と共にファモーゾは一時ほとんど姿を消してしまいましたが、パリーデは古代の土着品種を研究している友人たちと共にこのぶどうに注目し、大学の研究室の協力を得て試験醸造を行いました。遺伝子解析の結果、ファモーゾが他のぶどうとは全く関連性をもたないとてもユニークな品種である事が判明し、また試験醸造の結果も満足できるものであったことから、彼らはこの樹の植栽を増やし、ワイン造りをスタートさせたのです。パリーデはこのぶどうを一部アルベレッロ(株仕立て)で栽培しています。ファモーゾは食べても美味しいぶどうです。パリーデがファモーゾから造ったワインはその出来の良さが周辺の生産者からも注目され、現在続々とファモーゾを栽培し、ワインを造る生産者が登場しています。

チェンテジミーノは、元々ソヴィニョーネ(この地方の方言で「おいしい」という意味)と呼ばれていました。チェンテジミーノという名前は、昔このぶどうがとてもケチな男の畑でしか栽培されておらず、何とかこのおいしいぶどうを手に入れようと人々が男に「せめて100分の1(チェントジモ)でいいから分けて欲しい」と懇願した事から付けられた、と言われています。その独特の芳香から「ソーヴィニヨン・ロッソ」とも呼ばれるこのぶどうも、ファモーゾ同様他のぶどう品種との関連性をもたない独特の遺伝子を持っています。 ぶどうの房は小さく、病気にかかりにくいのが特徴です。より粒の小さい、凝縮感のあるぶどうを得るために、生育期の葉の剪定は定期的に行われます。

彼らはオーガニックにおいて、係る一連の作業の80%は畑で行われると考えます。それぞれのぶどうはそこからどの様なワインを造るかという目的に合わせ、様々な方法で収穫されます。畑において、ぶどうを始めとする様々な植物のバランスを保つのはとても重要なことです。 それによりぶどうの病気を予防することが可能となります。 農薬などの化学物質は一切 用いられません。

彼らは醸造においても環境に対し最大限の配慮を払っています。 醸造に必要な電力は 全て醸造所の屋根に設けられたソーラーパネルによる太陽光発電によって賄い、またぶどうをプレスする際に果汁の酸化を防ぐために二酸化炭素を満たした密閉容器の中でプレスを行いますが、その際に用いる二酸化炭素は空気中に放出する事なくビニール製の大きな袋に回収し、再利用しています。 醸造を行うセラー内の温度は常にコントロールされ、最適な温度に保たれています。発酵にはすべて野生酵母を用い、またSO2の添加は法律で認められている添加量の50%以下に抑えています。加えて試験的にSO2無添加の赤ワインを醸造し、今後の導入に向けて研究を続けています。また最近スタートしたスプマンテも、すべてトラディショナル(瓶内二次発酵)方式で醸造し、セラー内に所狭しとピュピトルを並べ日々動瓶(ルミアージュ)作業を繰り返しています。

畑では自然や植物の持つ力を最大限に引き出し、最新鋭の設備を備えたセラーでは手間を惜しむことなく伝統的な方法に則った醸造を行う・・・農学者として蓄積してきた知識と信念によって、パリーデはこうした一連の取り組みからユニークで素晴らしい品質を持ったワイン達を続々と生み出しています。
ヴィニタリーに出展した際は他の出展生産者たちがそのワインを味わうために彼のブースに押しかけたというサンタ・ルチアのワインは、今後ますます注目を集めることでしょう。